忍者ブログ
※16禁 むしこぶの薄桜鬼用出張版ブログ 女性向け・同人/意味が解らない方撤退推奨
<< 04  2024/05  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31    06 >>


2024/05/18 (Sat)                  [PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

2010/10/21 (Thu)                  剣足れば
ゲームの油小路事件のとこでお留守番組。
いや、斎藤まだやってないのでお留守番組かはっきりはわかんないんですけどたふんお留守番組? なので妄想でカバー。
斎沖てどうだろうて思ったんですけどこのふたりは油断すると沖斎にもなるというかこう、なんか、いまいちまだゆりです。斎藤やったらなんか変わるかなあ。

ところで沖田の斎藤くんと一くんの使い分け方がわからない。なんか法則あるんか。





 浅葱色の風が夜闇を切って駆けて行く。その姿を見る者はなく、また見た者は全て死ぬだろう。
 暗殺の任にあるというのに隊服を纏って出た彼らはそれによって増えるかも知れない犠牲よりも、浅葱の羽織に込められた志を取った。局長を害する者を排除する、それは隊にとってなんら恥ずべきことではないと、そう言わんばかりにだ。
 万が一一般人が巻き込まれたとして、屯所で匿う少女の時のようにはいくまいな、とちらとその様を思い浮かべ、けれど表情のひとつも変えぬままに斎藤はしんと静まり返った広間で刀の手入れをしていた。板間に広げた布に外した鍔を柄に並べて置く。
 表向きばかりではなく隊の裏の顔まで共に負いたいのだと主張した少女を伴った、伊東の接待は終わった頃合いだろうか。であれば既に斬り合いは行われているやも知れぬ。
 もしかすれば疾うに済み後始末の最中とも考えられたが、それにはまだ少し早いか、と斎藤は一人ごちた。
「斎藤くん」
 ふいに名を呼ばれた。
 足音も気配も忍ばせてやって来た男の、からかうような楽しげな声に動揺もせず、斎藤はちらと視線を流した。
「土方さんに寝ていろ、と命じられた筈だが」
「あれえ? けどその土方さんが、斎藤くんに相手してもらってろって言ってた気がするんだけどなあ」
 黙って手入れを続けていると、返事を期待したわけでもないのか総司は勝手に斜向かいへと片胡座を掻いて座った。腕を後ろ手に突いた拍子か緩く合わせている襟から覗いた鎖骨と喉仏が、くっきりと影を落としているのが判る。
 斎藤は目を伏せた。
「………総司。痩せたな」
 総司はふ、と苦笑した。
「まあね」
 態度と声だけなら半年前とまるで変わらぬ様子にも思えたが、あまり出歩けないで居るのか随分と生白くなった色の悪い顔も痩せた躯も、病が刻々と彼の命を蝕んでいる様が判る。
「部屋で寝ていた方がいい」
「退屈なんだもん。それとも一くんが僕の枕元で子守歌でも歌ってくれるっていうの?」
「……副長の命だ。そうして欲しいなら、そうするが」
「はは、言っておいてなんだけど、止した方がいいんじゃないかなあ。感染りたくないでしょ?」
 顔を上げて真っ直ぐに見ると、相変わらず何を考えているかも判らない笑みを浮かべた総司は目を反らさず視線を受け止め、ちらと悪戯めいた色を見せた。
「知ってるんでしょ?」
「……ああ」
「山崎くんもかな?」
「ああ」
「そっか。ま、君たちで良かったかな。黙っててくれるしね──山崎くんは、土方さんには言っちゃったのかもしれないけど……」
「そのような様子はなかったが」
「ならいいけど」
 余計な気遣いなんか耐えられないし、と眉を顰めて、総司は子供っぽく唇を尖らせた。
「土方さんてば、ほんと過保護でさ。山崎くんもちょっと出歩いただけでうるさいし、あんなのが増えたら困っちゃうよ」
「副長はお前を心配しておられるのだろう」
「一くんはすーぐ土方さんの肩持つんだから。あの人が僕に構ってたら、近藤さんだって心配するじゃない」
「肩を持つ、持たないの話ではない。それに近藤局長も、副長が騒ごうが黙ろうがお前のことは気に掛けているだろう。黙っていれば心配を掛けないなどと、本当にそう思っているのか」
「思ってるよ」
 即答し、総司は苛立たしげな顔で目を反らした。
「土方さんが騒ぐから近藤さんだって気にするんだ。あの人ももう少し気を遣ってくれたっていいのに」
「気を遣っているからこそ、お前に休めと言うのだろう」
「だーかーらあ、近藤さんに心配事増やしてどうするのさ」
 ゆっくりと刃を拭い、懐紙を握りしめるとくしゃりと硬い音がした。
「……今のお前は見るからに病人だ」
「そんなことないよ。僕はまだ戦える」
 むきになっているのか険のある声を高くした総司に、斎藤を緩く頭を振った。
「強がりはいい。……やはり寝ていろ。いざというとき少しでも長く動けねば、困る。お前の存在は新選組に必要だ」
「強がりなんて───」
「判らないか。新選組に必要だと言うことは、局長にとって必要だということだ。……局長に必要でないのなら、副長もお前にとやかくは言わん」
 副長の立場として、沖田総司の名が組織にも局長にも必要であることは確かだろう。
 だがそれ以前に土方歳三個人として、彼は総司を大切にしているはずだった。土方が手の掛かる弟のような彼を可愛がっていることは一目瞭然だ。
 総司本人も知らぬではないだろうが、優秀な兄を羨むような彼は、決して認めたくはないのだろう。ただ、深い信頼を背に、副長に甘え倒しているのだろうと、それは判る。
 自分と年の変わらないこの男は、子供のように甘えたがりで淋しがり屋だ。彼の我が儘や拙速な態度は新選組の露払い、戦闘狂として振る舞う沖田総司の名の役割を体現していることがほとんどだが、局長と副長に対してだけは、違う。
 しかし個人的な話はしたところで余計に総司を意固地にさせてしまうだろう。故に斎藤はそれ以上は言及しなかった。
 黙り込んでいた総司が、はあ、とひとつ溜息を吐いた。
「ずるいなあ、一くんは」
「そうか」
 目は刃に落としたまま、ふと唇で笑う。総司は目を細めていつもの無邪気さが空恐ろしくも思える笑みを浮かべ、ふと首を倒しあさっての方を見た。
「あーあ、そろそろ終わっちゃったかなあ。あの子まで一緒に行ったってのに、僕はおいてけぼりなんてひどいよ。僕も行きたかった……」
「待機も仕事のうちだ」
「僕は寝てろ、て命じられたんだもん。もし何かあっても、それは斎藤くんにお任せします」
 実際任せる気などないだろうにべえ、と舌を出し戯けて、総司は再び溜息を吐いた。
「今日みたいな仕事こそ、僕向きだと思うんだけどなあ」
 斎藤はん、と聞き咎めて目を上げる。総司はぐりぐりと首を回してほぐしながら、こちらも見ずにぼやきを続けた。
「袂を分かった元隊士の暗殺なんてさ、いかにも僕に向いてると思わない?」
「……汚れ仕事に手を染めたがる、というのも判らんな」
「僕は斬るだけだからね。左之さんや新八さんは、いろいろ考えちゃうんじゃないかなあ。もし平助くんを斬る羽目になったとして、結構落ち込んじゃうんじゃない」
 たしかに、平助を斬ると思えば斎藤でも気が重い。無論躊躇いはしないが、それでも痼りはいつまでも心に重しを掛けるだろう。しかしそれは、総司も同じはずだ。
「お前は違うというのか」
「僕は斬るだけだからね」
 もう一度繰り返して、いつの間にか斎藤を見詰めていた総司はにっこりと笑みを深くした。頑迷にも取れる言葉の裏に、己を剣と定めた総司の、その決意が見てとれる。
 総司は唐突に身を起こし、四つん這いで顔を近付け悪戯でも企むようににやにやと笑った。
「ねえ、もし一くんが羅刹にでもなっちゃったら、僕が殺してあげるよ」
「…………」
「狂った子たちの処分、今は山南さんが一人でやってるみたいだけど、」
「……何?」
 思わず口を挟めば「知らなかった?」と首を傾げ、総司はすと身を離して座り僅かに気遣い気な色を笑みに掠めた。
「山南さんも水くさいよね。彼らを誰よりも可哀想に思っているのはあの人なんだし、そんなの僕に任せてくれればいいのになあ。……て言っても、土方さんが何にもさせてくれないけど」
 羅刹隊を率いているのは彼だ。その部下が使い物にならなくなったのであれば始末を付けるのは無論上司の役割ではあるのだろうが、しかし自身も羅刹の身でありながら、明日の己かも知れぬ相手に始末をつけるというのはどれだけの苦痛だろう。
 総長は深く思慮する男だ。己が可愛い部下に引導を渡し続けることに、膿んでしまわねばいいのだが、と斎藤は思う。
「あれ、どうしたの黙っちゃって。まさか一くんが手を貸そうなんて思ってないよね? そんなのずるいよ」
 斎藤はちらと視線を流し、わざとらしくむくれている男を見遣った。普段から饒舌な男だが、今日は特におしゃべりが過ぎる。熱でもあるのかもしれないが、それだけでもないような気もした。
「……俺が伊東派へ潜り込んでいたことが気にくわないのか」
 秘密裏に任務を任されていたことへの嫉妬だろうか、と率直に尋ねると、総司はまさか、と目を丸くして肩を竦めた。
「そんな面倒くさい仕事、斎藤くんや山崎くんがお似合いだよ。僕の仕事はもっと単純でいいの」
 決して単純ではない聡い男だが、しかし隊から離れるとなれば少し嫌がるかもしれない、と斎藤は思った。彼は新選組が、それを束ねる者等が好きだ。側から離れ孤独な任に付くことは好まないだろう。
 そこまで考えて、斎藤はふと今夜の総司の饒舌の理由に思い至った。
 なるほど淋しいのか、と小さく嘆息し、斎藤は愛刀に油を塗った。独り寝が淋しいなどと言い出すほどの子供ではないが、皆が任務についている今夜、一人静かな部屋で横になっていることに耐えかねたのだろう。昼も一人で寝ていたはずだから、人恋しくなる頃合いではある。
 出歩いては副長や山崎に叱られているという話だが、それも話し相手もなくただ横になっていることに膿むというよりも、単純に心細くなってしまうためだろうと斎藤は思う。無論思うようにならぬ苛立ちもあるだろうが、そこに人恋しさが加算されて、結果副長の怒鳴り声を誘発しているだろう。
「総司。そろそろ……」
 しかしこの冷える広間に長居をさせるのも、と口を開き掛けた瞬間、顔を背けた総司が咳き込んだ。背でも擦るかと刀を置き掛けた斎藤を、顔を顰めたまま片手を翳して止める。
「………大丈夫、平気だから」
「部屋へ戻って横になっていろ。冷えは躯に触る」
「はいはい、ご忠告の通りにするよ」
 まだ少しぜいぜいと胸を鳴らしながら幾分か弱い声を無理矢理に出して、軽い口調を装った総司は立ち上がった。
「じゃ、何かあったら起こして」
「起こすほどのことは何もないだろう。心配はいらない。ゆっくり休め」
「仲間はずれにしたら恨むからね」
 唇を尖らせ戯けて言って、総司は手を振り広間を出て行った。
 来るときとは違い忍ばせていない足音が遠離るまで聞いて、斎藤は再び刀を手に取った。ばらした愛刀を、丁寧に組み直していく。
 やがて元通りに組んだ愛刀を鞘に収めながら今夜は何もあるまい、と口の中で呟いて、それからふと、斎藤は妙な胸騒ぎを感じた。刀の手入れなど何も今せずともいいものだ。昼の、疵や曇りのはっきりと見える時間に行ったほうがいいに決まっている。あまり一般隊士の前に顔を出すのも問題だが、ならば部屋へ籠もっていればいいだけだ。総司のように、それが淋しいなどということもない。
 だが、今夜は愛刀を持ち出さねば気が済まなかった。何故かは判らぬが、そうしてしまった己を不審に思う。
 もしや総司も胸騒ぎを感じていたのか、と膝を立て掛けた瞬間、玄関先から戸が破られる音が響き、すぐに剣戟と怒号が続いた。

 鬼の襲来による、血と屍の一夜の始まりだった。
PR
[9]  [8]  [7]  [6]  [5]  [4]  [3]  [1


メールフォーム
ブログ内検索

Designed by TKTK
PHOTO by *05 free photo

忍者ブログ [PR]