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※16禁 むしこぶの薄桜鬼用出張版ブログ 女性向け・同人/意味が解らない方撤退推奨
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2024/05/18 (Sat)                  [PR]
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2010/10/21 (Thu)                  咲くにも散るにも
PSP版のおまけ?? PS2版とかにもあるのかちょっとわかんないんですけど戦友絵巻のさのさんのやつ。の後。
さのさんは出てきません。沖ちづ。というか沖←ちづというか。すまないさのさん…まださのさんはやっていないからとっかかりがよくわからないんだ……

わたしゲーム始めてまだ沖田と土方クリアしただけというかんじなのでまだまだ基本知識が足りないです申し訳ない。なんかへんだったらすみません。と今更言う。




+++++++++++++++++

 共に桜を見て行かないか、と誘われて、酒を傾ける原田と共に夜桜を見上げていたのはつい先程。
 今夜はほどよく風があり、視界いっぱいに渦巻きながら降る花弁に酒を呑まずとも酔いそうだと二人で笑って、ぴりぴりと空気の張り詰めたままの、近頃随分と淋しくなってしまった屯所に元気の無かった原田の笑顔にほっとしていたそのとき、ばさばさと音を立てて降ってきたのは大振りの桜の枝だった。
 千鶴は桜の枝を抱え、そろそろと廊下を歩いた。もう大分遅い時間だ。ばたばたと足音を立てては休んでいる隊士たちに迷惑だろう。
 千鶴は目指す部屋の前で足を止めた。
「……沖田さん。おやすみですか?」
 むしろ返事があっても困る、寝ていてくれなくては、と考えながらそっと声を掛け、千鶴は暫し沈黙を聞いた。
「失礼します……」
 障子に手を掛けそろそろと引き、中を覗き込む。つと細く伸びた月明かりに照らされた部屋の主は、穏やかに目を閉じ眠っているようだ。
 ほっと胸を撫で下ろし、千鶴は起こさないように忍び足で部屋へと入った。腕に抱えていた大振りの花瓶に挿した桜の枝を、床の間へと置く。
「………こんな夜中に男の部屋へ忍び込むなんて、まさか夜這い?」
「きゃっ!」
 驚いた拍子にがたん、と揺れた花瓶を千鶴は慌てて支えた。水はさほど入れてはいないが、それでも倒れてはこぼれてしまう。
「お、沖田さん……目が醒めてたんですか?」
 枝と花瓶を抱え込みながら振り向くと、いつの間にか布団の上へと起き上がっていたいかにも寒そうな寝間着姿の沖田はいつもの顔にちらと不敵な笑みをひらめかせ、寝乱れた髪を無造作に掻いた。
「そこまで鈍ってると思われてたなんてね。僕を見くびっているのかな?」
「ち、違います! よくおやすみのようだったから……」
「いくらなんでも、声を掛けられて起きないなんてことはないよ」
 それは声さえ掛けなければ眠りの邪魔をせずに済んだということだろうか、と考えて、別に明日の朝になってから運んで来ても良かったのだと千鶴は頭を抱えた。月の光に光る桜が美しくて、ついつい後先も考えずに運んで来てしまった。
「まあいいよ。ほんとは昼に寝過ぎて全然眠くなかったんだ」
「………最初から起きてたってことですか?」
 にこにこと笑ったままそれには答えず、沖田は桜を指差した。
「で、それ、なに?」
 千鶴は気を取り直し、一番見栄えのいい角度が表を向くよう花瓶の位置を変えて身をずらし、沖田へ向き直った。
「桜です」
「それは判るけど……中庭の?」
「はい」
 ふうん、と首を傾げ、沖田は桜と千鶴を交互に見た。つと、意地悪げに瞳が細まる。猫そっくりだ、と千鶴は嫌な予感に瞬間的に身構えた。
「まさか君……木登りしたの?」
「え?」
「それで、手折ったとか。だめだよ、桜を折っちゃ。花泥棒は風流だなんてそんなのは酔っぱらいのおじさんの言い訳なんだからね」
「こっ、これは自然に……」
「自然に?」
 わざとらしく窘める口調の沖田にからかわれているのだと判ってはいたが、千鶴は慌てて否定した。
「さっき原田さんと桜を見ていたんですけど、そのときに自然に折れて落ちて来たんです。夜だし鳥が止まった重みで、ということでもないし、猫が上っていたわけでもなかったんですが、原田さんは花の重みで折れたんじゃないかって」
 確かに今が盛りと満開に咲いた花は可憐な見た目に反して重く、枝のか細さの割に大きめの花瓶でなくば挿すことが出来なかった。
 あとはもう散りゆくだけの花ではあったが、ここに散らかしておくのもと拾った千鶴を見ながら総司にも見せたかったなあ、と何気なく呟いた原田の言にはっとして、こうして持って来てはみたのだが。
「そっか、左之さん、そういえば花見がどうのって言ってたなあ。君と見てたんだ」
「一人でお花見されてましたけど……」
「ふうん……」
 どこか淋しげにも思える苦笑で目を細める沖田に首を傾げ、千鶴は恐る恐るその白い面を窺った。
「あの……ご迷惑でしたか?」
「ん?」
「桜、お嫌いでしたか?」
「いや、好きだよ」
 目を伏せ笑ったその顔が月明かりにひどく蒼くて、千鶴はつと立ち上がり、枕元に無造作に丸められていた羽織を取って痩せて尖った肩へと掛けた。それからふと、何を考えるでもなくその額へと手を当てる。
「───熱があるじゃないですか!」
「ん? そう? だけど……、」
「横になっていてください! 今お薬持ってきます!」
 掌に触れた熱さにぎょっとして、けれどまるで朱の上らない顔色にこれはまだ上がる、とこちらも青醒め、千鶴は慌てて立ち上がった。
「あ、ねえ、山崎くんには黙っててね」
「山崎さんがお薬持ってるんです!」
 ええ、じゃあいいよ別に、といかにも不服という顔と声で言った沖田に良くありません、と答えて、千鶴は慌てて部屋を出た。




 小柄な彼女のか弱い腕には余るほどの大振りの枝を、沖田は立てた膝に頬杖を突いて眺めた。慌て過ぎた千鶴が開け放して行った障子から、月明かりが蒼く差し込んでいる。春とはいえ、この京の夜気はひやりと冷たい。
 その外気に冷えた指先に触れる頬の熱さが、確かに発熱していると報せる。のこのこと花見になど付いて行ったらまた土方にどやされるところだった。
 それならそれで左之さんに付き合ってもよかったな、一人で花見なんて、と目を細め、沖田は床の間に早くも散った花弁を見た。朝には掃除をしなくてはならないかもしれないが、今はまだ、風流だ。

 散りゆく寸前の、満開の桜と華の重みに耐えられぬ枝。

「……僕は違う」
 まだ咲ける、と口の中で呟いて、沖田は己で見ても随分と細ってしまった腕を見た。薄い掌の剣胼胝はまだくっきりとしているのに、衰えた力は愛刀すら重く感じさせる。
 明日は道場に行こう、寝てばかりでは鈍る一方だ、と死ぬほど忙しいくせにこちらの見張りは怠らない土方の目をどうやって掻い潜ろうかと思案を巡らせ、少し楽しくなって沖田は笑った。
 廊下の向こうから、少女のぱたぱたと言う足音が、土方の忠実な密偵の気配を伴って聞こえ始めた。
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